catalog no: TOCP 50 037
CD compilation from Japan features a nice cross section of Yma Sumac's '50s material. Now out of print, it still shows up once in a while.
A copy exists in the Archives in case there are specific questions about it. The Tiki logo is not on the actual artwork.
Ultra Lounge Series (Toshiba-EMI) - Monophonic - 1996 Japan Compact Disc
インカの人は太陽を神として信仰した。インカ帝国の初代皇帝マンコ・カパックは13世紀ごろペルーの高地クスコに太陽の神殿を築いたという。15世紀に第9 代皇帝パチャクテックは太陽神殿を改築し、そこに仕える処女の制度を設けた。彼女たちは神殿の祭礼や貴族たちのための衣服とかアクセサリーなどを作るために、各地の未婚の若い女性の中から選ばれて特別の建物で生活し、ママコーナと呼ばれた。彼女たちの中には特に選ばれてクスコの、'処女の宮殿,, や太陽神殿に行く者もいた。というわけで「陽の神の乙女」はインカの歴史を映した歌であり、寝ころがって聴いてはモッタイない。そしてイマ・スマックは、世が世であればインカ帝国のお姫さま、いや女王様だったかもしれない尊いご身分、というのだからますますたいへんである。
イマ・スマックは1927年9月10日、ペルーのアンデス山脈中の高原にあるケチュア族の小村、人口250名というイチョカンに生まれた。ペルー政府の証明書によると母親は、16 世紀に征服者であるスペイン人によって滅ぼされたインカ帝国最後の皇帝アタウワルパの直系ドニア・エミリア・アタウワルパであるという。イマはこのアタウワルパ様の6番目の子で、インディアンとスペイン人の血をひいている。12歳の時に 、'陽の神の処女,, に選ばれて祭礼や儀式に参加して歌い、13歳の時にペルー政府に招かれて首都リマで歌い、大評判になった。そして彼女は政府の援助を受けてリマの女学校に通うことになる。そのころモイセス・ヴィヴァンコという若い作曲家で民謡研究者でもある男が、演奏家、歌手、踊り子たち46人の一座を率いて各地をツアーしていた。彼はイマの歌を聴き、彼女に音楽を教える。1942年の春、イマはモイセスのグループとラジオに出演して好評を博し、次いでアルゼンチンのブェノス・アイレスのラジオに出演した。そして6月に結婚。モイセス 21歳、イマは14歳。彼らはグループとブラジル、メキシコ、チJ)などをツアーし、1946年 1月ニューョークに渡った。ここでグループは解散。イマ、モイセス、イマの甥チョリタ・リヴェロのトリオになってクラブに出演。あまり良い仕事がなく、苦しい生活が長く続いた。1949年の終り近く、ニューョークのクラブ、'ブルー・エンジェル,, に出演した時、キャピトル・レコードのワルター・リヴァースがイマの歌に大ショックを受けた。これがチャンスとなって彼女とモイセスはキャピトルと専属契約。ペルーの古謡を基にモイセスが書いた歌を集め、レス・バクスターが編曲・指揮を務めたイマのアルバム 『エクスタベイ』は発売と同時にセンセーショナルな評判になり、1950年8 月のハリウッド・ボールでのコンサートは大成功。1951年2 月ニューョークのロキシー劇場に出演した時はダニー ・ケイが司会を担当、ペルーの前副大統領ラフアエル・ラルーコ・ヘリエッタ博士がイマに黄金のインカのイヤリングを贈った。1954年にはチャールトン・ヘストン主演の映画『インカ王国の秘宝』に出演して歌った。こうしてイマは世界的な名声を得て活躍を続け、1963年には日本のステージに立った。
イマ・スマックが本当にインカ皇帝の末商かどうかは別として、4オクターヴという驚異的な広い音域をまったくスムーズに駆けまわる彼女の声、そのフレージング、ブレス、スタイルは類がなく、まさにユニークという表現こそぴったり。ミステリアスな深み、ファンタスティックなひろがり、そしてエキゾティックなスリル。彼女の歌の不思議な魅力にひきつけられ、時を忘れてしまう。
彼女のキャリアはとても長い。1988年にはディズニー映画の主題歌を集めたリンゴ・スターらさまざまなジャンルのスター多数によるアルバム 『眠らないで』 に参加、オールド・ファンを驚かせ、嬉しがらせてくれた。でも彼女が最も素晴らしかったのは1950年代、つまりキャピトル専属時代だ。ただし、アルバムの中にはエキゾティックなムードやトリッキーな面白さを強調しすぎて、かなりグロテスクなゲテモノじみたものもある。ビリー・メイが編曲・指揮した『マンボ!』はそのひとつ。モイセスが編曲・指揮した1959 年録音の『フエゴ・デル・アンデス』はペルー音楽の伝統的魅力をよく出した快作で、その中の4 曲(④⑰⑲⑳)が特別企画編集の本CD に収録されている。さあ、お楽しみ下さい。
(Sep.1996 青木啓)
total play time (approx): 69:21